虚 像

 

 

女子大生だった頃、今よりだいぶ足もウエストも細く、

 若さという美を満喫していた。

 サラサラのロングヘア、色白で生まれつき今流行りの小顔、

 男なら誰でもその程度で声をかけるのだろう。

 よく後ろから(?)声をかけられた。

 

 その日、街をひとり歩きながら、

 ガムの紙屑をつい、ポイ捨てしてしまったのです。

 案の定、若い女性だということだけで、男性の視界に入りやすかったので、

 一人のおじさんが声をかけてきました。

 「お嬢さん、何か落としましたよ」

 近づいて、そのレディの落し物が、ガムの紙屑だったとわかると、

 そのおじさんは、私の顔をじっと見、

 百年の恋も一瞬にして醒めたような、

 失望し、あきれた表情を浮かべて去っていきました。

 

ああ、百年の恋が醒めたのは私も同じ。

 見えなかった目がはっきりと見えるようになったように、

 美しさとは、どういうものかということが、

 はっきりとわかったのでした。

 私はとんでもない勘違いをしていたのです。

 

 おじさんの目には、私がとても醜い女に見えたでしょう。

 20年経った今でも、その時の恥ずかしさと、おじさんの表情は

 はっきりと憶えています。

 

 

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